<37>

かつては野菜の代用品

 本県の冬は、言うまでもなく厳しい季節風と積雪に見舞われる。今でこそ、このような季節でも新鮮な野菜が店頭に並べられているが、一昔前であればなかなか手に入らなかった。そうした中で、冬場に採集できる海藻は野菜の代用として珍重され、地域の文化として根付いてきた。

 とりわけギバサは、沿岸部のみならず内陸部まで広く食され、県内では知らない人はいないほどポピュラーな海藻である。春の山菜が芽を吹くより一足早く旬を迎えることから、春を告げる草とも言われている。しかし意外なことに、他県では佐渡島などの一部の地域を除いて、ほとんど食用にされていないのが現状である。

 ギバサは標準和名をアカモクと言って、ホンダワラ科に属しており、ハタハタの産卵場の役割も果たしている。一年生で大変繁殖力が強く、日本全国に広く分布しており、主に波当たりの強い場所に群生する。

 ホンダワラ科の海藻は、雄株と雌株があり、繁殖期になると、生殖器床という唐辛子にも似た突起物が形成されるが、その中では精子や卵がつくられている。雄株から放出された精子が海中を遊泳して、雌株の卵に達すると受精が起こり、受精卵が放出される。受精卵は底に落ちると、仮根という付着する機能しか持たない根を伸ばして、1年かけて親株へと生長していくのである。

 本県におけるギバサの繁殖期は5月下旬―6月上旬である。繁殖期の少し前がよく粘るとされることから、県内では5月中下旬に漁獲されるが、旬とされる2―3月に生鮮で出回っているのは、実は佐渡や飛島などの県外産である。

 県内で最も盛んに漁獲が行われているのは、八森町岩館地区で、20人程度の漁業者が操業しており、毎年30―50トンを漁獲している。また、青森県では食用とされないが、深浦地区などでも漁獲されており、漁獲物は岩館地区の加工業者の元へと運ばれ加工される。加工品というのは、湯がいてから刻んでパック詰めしたものであるが、冷凍技術の向上により、周年出荷が可能となっている。

<写真:雄(上)と雌(下)の生殖器床>

(秋田魁新報2000.3.17付)


 最初のページへ戻る