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雌雄ははさみで区別

 カニ類の雌雄は、俗に「ふんどし」と呼ばれる腹部(裏返したときに下の方に見える三角形の部分)の形で区別するのが一般的だが、サワガニの場合はそれ以外にも簡単に見分ける方法がある。甲幅が約1.5センチを超える雄は片方のはさみ脚だけが極端に大きいのだ。

 カニにも右利き左利きがあるのかはわからないが、秋田県ではほとんどの雄で右のはさみが大きい。はさみ脚は餌(えさ)を摂(と)るのに利用され、河原ではこれを使って昆虫などの小動物を捕食する様子を見ることができる。サワガニは雑食性で植物も餌にするが、動物性の餌をより好むようだ。また、はさみ脚は攻撃にも使われ、特に大きな雄に手をはさまれたなら結構痛い思いをする。

 九州など暖かい地方では冬も流れの中で過ごすが、寒さのきびしい県内の川では冬は川岸の土の中で冬ごもりをしている場合が多い。

 サワガニは、食材としてはどちらかといえば嗜好(しこう)品的なものだが、串(くし)に刺して塩焼き、唐揚げ、甘露煮など料理法はさまざまで、昔は食べたという、思い出を持っている人も多いのではないだろうか。ただし、ジストマという寄生虫の代表的な中間宿主であるため生食は絶対にしないことと、調理に使ったまな板などを清潔にすることには十分注意してほしい。

 餌のえり好みもほとんどなく簡単な装置で飼えるため、ペットとしては飼いやすい生物と言える。ただし、脱皮後は共食いにあう危険性が高く、また、卵や稚ガニを抱いている母ガニはストレスに弱く、すぐにそれらを離してしまうし、他のカニや母ガニ自らが卵や稚ガニを食ってしまうこともあるので、たくさんの隠れ場所を用意した上で、少なめに飼うことが肝要だ。はさみを器用に使って餌を摂る様子や、母ガニの腹で動き回る稚ガニの姿はなかなかかわいいものだ。

 川の中ばかりではなく、産卵や冬ごもりには川岸も広く利用する習性がある。このため、サワガニにとって好適な生息環境は、水が冷たくきれいであることは言うまでもないが、日除(よ)けとなって水温の上昇を抑え、適度な湿り気と安定した土壌、さらには豊富な餌を与えてくれる木や草が繁る、自然のままの川岸を備えた川であることが不可欠となる。

 サワガニは、環境の変化には最も弱い種類で、最近はあまり見かけなくなったという話を聞くが、このような愛らしい生物がいつまでもそこら中に見られるような郷土であってほしいと願う。

<写真:水が冷たくきれいな環境を好むサワガニ。が雄>

(秋田魁新報2000.6.16付)

<完>


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