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China communication 3 2000年11月8日UP

 今回は、蘭州の工業、工業発展に伴う環境問題、また、西部大開発についてお伝えします。

 蘭州は、石油化学工業が盛んな都市として有名であり、また、ロケット、原子力産業の基地としても知られています。工業化が進んでいる都市だけに、大気汚染もまた有名なのです。

 中国は、各種工業の中で、石油化学工業の発展を重視してきました。油田開発の進行とともに中国最初の大型総合製油所が1958年、蘭州に建設され、また、1969年には、エチレンのコンビナートも建設されています。1983年から中国石油科学工業総公司が全国の主要なコンビナート、工場の指導と管理を統一的に行っています。

 蘭州の大気汚染は、工業活動に伴う石油燃焼、石炭燃焼、自動車排出物に起因すると同時に、黄土地帯に位置するため砂じん(粉じん)の影響もかなり大きいのです。蘭州市内で観測された日平均浮遊粉じん(TSP)濃度は、中国での第1級環境基準値に相当する数値をはるかに越え、全観測地点の93%にも及んでいます。工業由来の有害元素として鉛(pd)、ヒ素(As)、カドミウム(cd)の濃度も高く、特に発ガン性を有するベンツピレンの濃度は東京の10倍(1995年時点)にも及んでいます。

 中国の大気環境対策では、汚染物質濃度の測定データが不十分であると同時に、健康影響に関する調査研究例も少ないですが、大気汚染データから推測すると驚くべき健康被害の実態が明らかになる可能性があり、早急な対応が必要であると、蘭州市環境保護研究所と慶応義塾大学地域研究センターの共同調査会では、警告を発しております。

 環境問題については、ただ1国の問題として片付けるわけにはいきません。日本でも酸性雨、大陸からの砂じんの飛散も観測されています。

 日本が過去に経験した公害問題や、技術的ノウハウの提供を急がなければならないと実感しています。

 写真1(右上)は、蘭州市の大気の状況を示しています。晴天にもかかわらず視界が悪いのがお分かりでしょうか。

 中国は、WTOへの加盟など、一応は、先進国として名を連ねようとしています。しかし、対外的には、目覚しい経済発展を遂げているように見えるわけですが、それは、沿海部での発展が目覚しいだけであって、しかも、外国資本の投資によって盛えていると言っても過言ではありません。


 国内に目を向けてみますと、沿海部と内陸部の経済格差が大きすぎます。この経済格差が中国の真の先進国として位置付けに影響を与えているのです。中国の中期経済計画では、全国を10の経済区に分類しています。
写真2、3は、街中で見かける壁に書かれたスローガンです。「西部大開発は蘭州の大発展につながる」と書かれています。

 甘粛省、青海省、寧夏回族自治区の西北地域は、「黄河中流経済区」に分類されています。この中で一番大きい甘粛省でも、そのGNPは約260億元(1995年時点)、省別では、下から5番目で広東省の7分の1に相当します。このような経済格差は、中国西北部の苛酷な環境にも起因していると思われます。このような経済格差の是正を計ろうと言うのが、国家プロジェクト「西部大開発」です。田中角栄元首相の「列島改造論」の中国版とでも言うのでしょうか?道路建設などの公共事業の重点配分、各種公共施設の建設といったことが中心のようです。

 
 しかし、巨費を投じると同時に生態環境悪化も懸念されているのです。甘粛省では、ここ50年、工業化の進展に伴い、生態系の保全に力を入れてきたつもりだが、同時に生態環境が、間違いなく悪化してきた50年でもあったと伝えられています。確かに生態環境保全にも力を入れているようです。「退耕環林環革」をスローガンに禿山や草木の全くない土地に植林や草地を作ろうとしています。しかし、農民を農業から林業へ転換させようというのは、少し問題があると思われます。農業にも十分な環境保全という公益的機能があるわけですから!

 写真4、5(写真4の拡大写真)は、蘭州市郊外です。背景の山々は、荒涼とした黄土の禿山です。幾らか植林されて、うっすらと緑がかっているのがお分かりでしょうか。
 このように、国家プロジェクトとして「西部大開発」は動き出しています。

 先月、24日、蘭州で、今年初めての雪が降りました。粉雪が舞う程度でしたが、その前日には、敦煌の砂漠も雪化粧したそうです。平年に比べ、少し早い冬の訪れみたいです。大陸性乾燥気候の甘粛省では、気温はすごく下がりますが、雪の降る事は、滅多にないようです。

 長野間農業試験場長を団長とする農業調査団の皆様、総合食品研究所主任研究員 菅原様、小野寺教育長を団長とする文化財調査団の皆様、細かなお心遣い、まことに有難うございました。この文面にて御礼申し上げます。

 次回は、甘粛省の農業、農村、また、中国の諸事情についてお伝えしたいと思います。