千畑町の土崎地区にある「野際しず」。平成12年夏に開催された「しずの学校」による地元の子ども達の調査で、環境庁のレッドデータリスト(平成11年2月18日公表。ブックは現在作成中)や秋田県版レッドデータリスト(第一次:平成11年6月9日公表)で絶滅危惧種 IA類に指定されているイバラトミヨ雄物型(通称ハリザッコ)が生息していることが確認されました。
 「野際しず」の広さは約300m2。この近辺では近傍の「大シズ」とならぶ大きなシズで、昔は地元の人々が水浴びなどをしていたことも。現在でも農業用水として地元では利用されていますが、最近は昔ほど管理が行き届かなくなっていて、しずの一面にはヨシが生い茂り、水底には土砂が堆積している状態でした。
 この地区では平成10年より「土崎・小荒川地区」としてほ場整備が始まりましたが、ハリザッコの生息が確認されたことから、平成11年9月に立ち上がった県農政部の「農業農村整備に係わる生態系保全対策検討協議会」により農業振興と生態系保全との共存をめざし、地元有志による「トゲウオを守る会」等とも協力しながら事業をすすめてきたという経緯があります。
 しかし、このことがきっかけになり、地元ではあらためてこの地区の自然環境のすばらしさや自然環境と農業の深い関わり等を見直す動きが出てきており、しばらくはおこなわれていなかったシズの清掃(堰払い)が、このほど大々的におこなわれました。
 この日集まったのは、「トゲウオを守る会」、「秋田淡水魚の会(通称:ザッコの会)」、「土崎・小荒川地区ほ場整備推進委員会」、「北小屋ボランティア」の構成メンバーや地元住民のほか、地元選出の県議会議員、千畑町役場農政課・企画課、秋田県生活環境文化部自然保護課・農政部仙北平野土地改良事務所など、あわせて約60人。生息している魚達をいったん避難させるため、捕獲作戦から始まり、続いてシズの水をポンプで汲みだし、底の土砂やヨシなどを取り除きました。
 鬱蒼と茂るヨシをかき分け、捕獲作戦にとりくむ。ハリザッコは、なんと約1500匹を捕獲できた。  網や追い込むための棒を巧みに操り、他にもフナ、ドジョウ、コイやヨコエビなどや水生昆虫などを次々捕獲する。
 昔を思い出し夢中になる大人も。きっと小さい頃は毎日のようにシズで魚獲り?!  木陰には枯れ葉等が堆積し、ヨコエビや水生昆虫などがいる。
 ポンプで水を抜き、いよいよ機械と人力で底さらい。  長年堆積したヨシの枯れ草が、水を濁らせ、水深を浅くしていた。
 人間が手を全くかけなくなれば、もしかしたらヨシの枯れ草や土砂で埋まっていたかもしれないこのシズは、今回の取り組みにより澄んだ水をたたえる美しいシズとしてよみがえりました。このように昔から続く草刈りや土砂さらいといった、人間の農業の営みによる適度な攪乱が、自然環境のバランスを保ってきたのかもしれません。
 そして今、あちこちで取り組まれている環境と農業との共生をめざす活動の中で、ひとつの問題点としてあげられている、整備後に欠かせない維持管理作業は、一般にはグランドワークと称されるこのような民・官・地域住民との三者の協力体制によるものが、今後ひとつのスタイルとして確立していくことでしょう。
 
 このあと、地元北小屋ボランティアは、秋田県の「きらめき事業」の助成を受けて「イバラトミヨが生息する泉の里づくり」の講演会を平成14年2月17日に開催し、野際しずやイバラトミヨに対する理解を深めて地域の財産として保護・保全し、将来にわたり自然や水環境の豊かな泉の里作りをめざし、地域の活性化をはかっていくそうです。
 千畑町では、この「野際しず」の一帯の公園化を計画していて、来年度より駐車場やトイレ、緑地などを整備し、環境教育の場やグリーンツーリズムなどの散策コースに取り込むことなどを計画しています。

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