イバラトミヨと暮らす 郷土愛はぐくむ

 「秋田さきがけ」新聞記事より(2001年1月1日付け)



昭和60年、六郷の湧水群は環境庁の選定した「名水百選」に選ばれた。
平成7年、国土庁から「水の郷」として全国34地域の一つに認定されている。

かつては町内いたる所で生息していたイバラトミヨ、現在では
限られた清水に細々と生息している。


ハリザッコ繁殖に成功 六郷中科学部

  5月16日 縄張り行動が婚姻色のあるハリザッコほとんどすべてに見られた
  5月23日 水槽内で卵を発見。巣づくりが間に合わず、雌が生んでしまったようだ。
        小さい水槽に移す

  5月30日 稚魚が見えた。ほとんどは水槽の底にいた
  6月5日 行動が活発化。縄張り争いが多発
  6月7日 池で巣づくりを確認

  6月16日 池でも稚魚が成長し、大きいものは1cmぐらいになる
  6月27日 水槽内で雄が雌を巣に誘う行動(ジグザグダンス)が見られる。
        池の稚魚は2・5cmに成長

イバラトミヨの増殖に成功した六郷中学校の科学部員たち。
人工池での飼育、観察を続けてきた。



 独特の生態観察/育てた稚魚放流

 六郷中学校の科学部の生徒たちは、一昨年夏に同校でイバラトミヨの飼育を始めて以来、毎日のように観察日誌をつけながら世話を続けている。繁殖に成功した昨年五月から六月にかけては、巣作り、縄張り争いなど独特の動きが数多く観察され、日誌をにぎわした。

 科学部ではここ数年、農薬や酸性雨との影響など、地元に数多くある清水をテーマにした研究を続けており、イバラトミヨの研究もその延長上にある。同校が、県の「ふるさと子どもドリーム支援事業」で支給された百万円を活用、イバラトミヨの飼育を始めることに なったときも、全国各地でイバラトミヨが属するトゲウオ科の魚の人工飼育に挑戦している機関の情報をインターネットなどで探し、人工池の作り方、育て方のポイントなどを聞きだすなど、部員たちが奮闘、繁殖の成功につながった。

 ほかにも、イバラトミヨが生息する町内の清水を調査、マップにまとめたり、イバラトミヨがどのようにほかの魚を感知し、縄張り行動に出るのかという研究などもまとめている。これらを昨年十月の仙北郡理科研究発表会で発表、最優秀賞に選ばれた。同月に行わ れた県理科研究発表大会にも参加、成果を上げている。

 現在の部員は一、二年生それぞれ四人ずつ。春先の繁殖期を除けば、毎日そうそう劇的に変化が起こることはなく、観察日誌は「特に変化なし」「異常なし」という記録がほとんど。決して華やかさはない。だが、「冬は雪が多く積もったときなど、大変な思いはしたが、やめようと思ったことはない」(鈴木亮太部長、二年)、「以前は良い方だと思っていたこの町 の環境が、悪くなってきていることを実感した」(一年、藤井豊君)と、環境に対する意識を肌で感じ取っているようだ。

 十二月、部員たちの手で、成長した稚魚が町内の藤清水、御台所清水に放流された。今はイバラトミヨの生存こそ確認できなくなったものの、ヨコエビなど工サとなる小生物は豊富に生息しており、イバラトミヨが住み着くことは十分可能だとみられている。自らの手で町の環境をよみがえらせようと動きだした部員たちは、誇らしげな表情を見せていた。

藤清水 御台所清水

仙北平野での取り組み

 県の「ふるさと子どもドリーム支援事業」「ふるさと子供ドリームアップ事業」による補助金支給や、総合学習の導入をきっかけに、身近な環境問題を学ぼうという動きは他の小中学校でも活発になっている。

太田南小 用水路から救出作戦

 昨年度は、川口国有林内にある太さ県内一という天然スギ「オブ山の大杉」の観察会を開くなど、大きな自然を相手に環境問題を学んできた太田南小学校。「今度は身近な環境に目を向けようとしていたところ、県仙北平野土地改良事務所から、駒場北地区圃場整備事業で改修される水路に生息するイバラトミヨの救出作戦の誘いを受けた。まさに渡りに船だった」と後松順之助校長。イバラトミヨを通した環境学習が全校児童で進められてきた。

 学校近くの横沢公園の池には、多くのイバラトミヨが生息しており、観察会は学年ごとに頻繁に行われた。イバラトミヨの保護活動の先進地である平鹿町で長年実務を担当してきた高村明さん(現福祉保健課福祉係長)を招いた学習会なども開かれた。
 「一年間を通して観察してきたことで、子どもたちに責任感、愛着が出てきたようだ。イバラトミヨが住める町に誇りを持てるようになったのでは」と後松校長。同校は年度内にイバラトミヨの保護を訴えるパンフレットを作り、町民に配布して学習を締めくくる予定だ。

千畑町 しずの学校が生息調査
(イラストは、「広報せんはた」特別号、しずの学校表紙より)
しずの学校は「田んぼの学校」のひとつです。

 子どもたちが環境問題に真剣に取り組んでいる姿は、大人たちの意識も変えようとしている。用水路の工事中に救出作戦、学校での飼育、学習会といったさまざまな活動の場面で、地元の住民や保護者たちが積極的にバックアップ。
 千畑町土崎地区の住民がつくる「トゲウオを守る会」(佐藤龍太郎会長)は、親子で農業と自然の大切さを考える場を作ろうと「しずの学校」を開校。圃場整備で埋め立てられる「野際(のぎわ)しず」周辺のイバラトミヨの保護活動、町内の生息地調査、巣の観察会などを実施。学校の枠を超え、地域ぐるみで環境保護を考える機運が高まってきている。

 また、「ハリザッコみっけた」と銘打った純米吟醸酒を発売している栗林酒造店(六郷町)は、売り上げの一部を町に寄付、イバラトミヨと清水の保全に役立ててもらおうことにしている。栗林啓亮社長は「清らかな水がないと酒造業は商売が成り立たない。私たちはハリザッコと同じ境遇に立たされている」と言い切る。

 清らかな水、恵まれた自然・・・自分たちが住む町の素晴らしさ。そして、それらが、何もしなければいつかは失われてしまいかねないということをイバラトミヨは教えてくれているようだ。

関連ホームページ 田んぼの学校 http://www.acres.or.jp/tanbo/

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