秋田さきがけ(2000年5月23日付け)
イバラトミヨ (地方点描)

 仙北平野の一角、千畑町土崎の湧泉 (ゆうせん)群を回ってみた。土崎・小荒川地区の湧泉/仙北平野土地改良事務所提供
 案内してくれた地元の農家の方々の、童心に帰ったような驚きぶりがなんともほほ笑ましい。

 土崎地区は「泉の里」である。
 奥羽山脈から流れ出て浸透した地下水が次第に低地へと流れ、泉となってわいているのだ。昔から多くの泉が集落や田んぼにあり、生活用水、農業用水などに利用されてきた。

 住民たちにとって湧泉は「命の根源」であり続ける。
  「命の根源」は魚とて同じだ。

 清水にしか生息しないとされる淡水魚イバラトミヨ(地元ではトゲウオ)は.県版レッドリストで「絶滅危ぐ種IA類(ごく近い将来絶滅の危険性が極めて高い)」に分類されている。そのイバラトミヨが、この地区の湧泉群とそれに連なる用水路には、まだたくさん生息しているから驚きだ。

 「県内にこんなに生息している一帯はないのでは。何とか泉ともども保全したいものだ」と農家の一人が話せば.別の農家は「保全するだけではなく、環境教育の場や観光資源にもなり得る。かつて湧泉の周りにあった水源涵(かん)養林も復元できないものか」と話を進める。

 仙北平野のほ場整整備事業はこれからが本番。同地区も10a田を1ha田にする事業が進んでいる。イバラトミヨの生息する湧泉群も事業対象となっており、来年度から工事が本格化する。

 地元では工事で一部湧泉が埋められる可能性もあるとして保全を求める声が強まっている。

 透明性抜群の泉や水草の生えた土水路でイバラトミヨが泳ぎ回る。
 周囲には水を張った田んぼが広がる。まさに春の農村の原風景−。

(大曲支局長・船木保美)