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秋田さきがけ2001.6.10 社説
 
 きょう十日からまた、受け入れ農家宅で過している。教科書や下着が詰まったリュックサックを背負い、前にはカバン、バットなどを抱え、昨夜、学園一の寮から引っ越してきた。

 合川町教育委員会が運営している「山村留学・まとび学園」の園生たちだ。親元を離れ、豊かな自然に囲まれて生活することで「生きる力」を養うのが園の指導方針。現在、小学五年女子一人、六年男子三人、中学二年男子二人の計六人が在籍している。今春、新たに入園したのは愛知県からきた中二の男子一人。今やホームシックを乗リ越え園の生活に親しんでいる。

 朝は、ヤギの乳しぼりやニワトリ、ウコッケイの世話をした後、合川南小と合川中へ通学している。女子はミニバスケ、男子は野球部に属し、学校生活は他の児童生徒と変わらない。

 違うのは一カ月のうち半月は、近くの農家宅にホームステイをし、あとの半月は園での生活。農作業のほかにさまざまな体験活動がある。春の里めぐりから始まり、みその仕込み、キャンプ、田植え、タケノコ採リ、カジカ捕りや森吉登山、カヌー遊び、稲刈り、キノコ採り、脱穀など収穫察、一人旅、秋田の冬祭リ見物、スキーハイクなど盛りだくさんだ。

 園の寮では自分たちがつくったミニトマトや米、野菜などを食べている。四季に合わせた暮らしをし、田舎の知恵をしっかリ身に付けている。

 寮には、テレビがない。TVゲームもできない。おやつ以外の間食はだめ。衣類の洗濯は、各自が下洗いする。自立できる生活が目標だから、整理整とんはもちろん自分でやらなくてはいけない。

 私たちの周囲の子どもはどうだろう。テレビやTVゲームに没頭する毎日といっていい。身の回りの整理さえも親がかりのケースが多い。雨の日は車で送迎など当たり前という家庭もある。

 まとび学園の六人は、秋田市の一人のほかは沖縄、東京など県外出身。最年長は留学三年目の北海道からの中二年生。小学生はクロカンスキーに夢中だ。

 学園が開設されたのは平成五年。計四十人が卒園している。一人平均の留学年数は二年に及ぶ。子どもにとっては決して甘くない生活だが、「もう一年残リたい」という要望で留学が延びているという。

 一方、合川町の受け入れ農家は約二十軒。地域の子どもとの交流も活発だ。園生の存在が地元・合川の良さを再認識する機会にもなっているようだ。

 留学させた親は当初、心配と寂しさが募る日々になる。しかし年六回の参観や手紙で、「朝はちゃんと起きているし、がまんの心も学んだよ」「お米をつくる方法を、お母さんは知らないでしょう」「キャンプや川遊び。自然がいっぱいだよ」と子どもから知らされると、自信がついた気がしてようやく落ち着くという。

 三月、「万灯火(まとび)」の行事が町で催されるころ別れの季節になる。受け入れ農家にとってにぎわいの火が消えたようになる。「生活に活気と張りを感じさせてくれた」と、感謝して園生を送り出すほどだ。

 まとび出身の子どもたちは、「合川が第二の故郷」と語っているという。

 翻って秋田の子どもたちは、このまとびの子どもたちが糧にしている豊かな自然を、田舎の恵みを、果たしてふんだんに享受しているだろうか。都会志向から、コンビニ的でお手軽な風潮の生活に流されていないだろうか。まとびの子どもを知っての思いだ。

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