秋田さきがけ2001年9月21日

 県北地区は「地域の顔」を意識した農作物の栽培が盛んだ。既にネギ、キュウリ、ミョウガなどは、一定の地位を確立した。メジャーではないかもしれないが、比内町の特産・トンブリは言うまでもなく生産高全国一。能代市のチンゲンサイ生産団地も、国内最大の栽培面積と味の良さを誇る。上小阿仁村は食用ホオズキやズッキーニなどユニークな食材に積極的だし、能代山本地方の地場産品・ソバも見逃せない。新たな飛躍を目指す各地の取り組み。ひたむきさに夢が膨らむ。

国内最大の生産地 トンブリ
畑のキャビア・・・全国にファン 比内町

 プリプリとした独特の食感でニックネームは「畑のキャビア」。とはいえこちらは百グラム百数十円で買える庶民派で、食卓ではおなじみの食材だ。

 トンブリは、アカザ科のホウキ草の実を江戸時代から比内地方に伝わる独特な技術により加工した自然食品。魚の卵のような淡い緑色、味も淡白で「畑のキャビア」とか「陸のカズノコ」と呼ばれ、プリプリした歯ざわりの良さは絶妙。左はナメコ長芋トンブリ、右は トンブリスパゲティ。
トンブリの刈り取りは、一本一本鎌で刈り取り、トンブリの束を脱穀にかける。 現在は、トンブリ用に汎用コンバインを改良した機械で刈り取る試験が行われている。現在は、トンブリの定植から刈り取り・脱穀に至るまで機械化が進みつつある。

 ほうきの材料にもなるホウキグサを刈リ取り、実を乾燥させた後煮込んで製品化する。全国一の生産高を誇る比内町では現在約七十戸の農家が栽培。全国的にも知名度は高く、東京、大阪など大都市への出荷が大半を占めている。

 口の中ではじける食感をいかに出すかがカギ。
 かつては収穫後、各農家が鍋(なべ)で煮た後に小川の水でもみ洗いして、表面の薄皮を取リ除くといった家内工業的手法でプリプリ感を出していた。現在は町内数カ所に共同の加工センターがあり、一括生産で品質を維持している。

 生産額が二億円を超えた時期もあったが、栽培農家の高齢化に伴い作付面積は徐々に減少。昨年度の生産額は八千万円ほどに落ち込んだ。

 出荷にあたるJAあきた北では「栽培農家はほどんどが五十代以上で栽培戸数は年々減っている。また、他の料理への添え物として使われるケースが多いため、不況下ではどうしても需要が落ち込む」と現状を分析。

 「ビタミンやミネラルが豊富な点をアピールし、健康食品としても売リ込んでいきたい」と話している。

チンゲンサイ 栽培面積は日本一 
甘味十分・・・浅漬けお薦め 能代市

 能代市河戸川の砂丘地帯に、中華料理に欠かせない食材「チンゲンサイ」を育てるビニールハウスが立ち並ぶ。国内最大の栽培面積を誇る有限会社・大和農園の生産団地だ。化学肥料を一切使わず有機肥料だけで育てられた逸品は、今年四月に県内初の「特別栽培農産物」に認定された。県内をはじめ首都圏にも広く出荷され、同市内の小中学校の学校給食にも用いられている。

栽培面積日本一を誇るチンゲンサイ(能代市、有限会社・大和農園)

 55棟を数えるハウス全体の栽培面積は実に約一万五千八百平方メートルに上り、生産高は年間約百五十トンを誇る。

 「うちのチンゲンサイは甘みの強さと、シャキシャキとした歯ごたえが特長。素材の味がはっきり分かる浅漬けが一番おすすめ」と大塚和浩社長(39)は自信たっぷりに話す。

 栽培で最も重要なのは土づくり。ミネラル豊富な北洋産の海藻や、もみ殻、木炭、カニ殻などを配合した有機肥料を使用・これらが土になじみ、生産量が安定するまでには五年の年月を要する。

 今月、収穫のピークを迎えたハウスには、研修に訪れる大潟村の県立大短期大学部の学生らが後を絶たない。

 激しさを増す価格競争とは一線を画し、「安全でおいしい野菜を手ごろ.な値段で供給する」ことを目指す大塚社長は、消費者のきずなを何より重要視する。国道7号南バイパス沿いに昨年開設した野菜直売施設を拠点に、消費者との信頼関係の輪は確実に広がっている。

石川そば 家庭の味、名産へ
 この風味、食感・・・「うまい」  峰浜村石川地区

 峰浜村石川地区は今の時期、稲穂が揺れる水田の黄金色と、開花時期を迎えているソバ畑の一面の自が見事なコントラストを描いている。

 峰浜村石川地区の特産「石川そば」。一面白く染めるソバ畑は、美しい田園景観のひとつ。産直施設「おらほの館」では、石川そばの販売やそば打ち体験ができる。


 ソバは能代山本地方の隠れた地場産品である。流通規模が小さいせいか全県的な知名度はいまひとつだが、「石川」(峰浜村)、「鶴形」(能代市)、「志戸橋」(山本町)は地元では知る人ぞ知る逸品である。

 生産、流通量ともに横綱格なのが石川そば。もともとは自家消費やお歳暮用として各家庭で細々と作られる程度だったが、風味と食感の良さが.ロコミで広がり、二十年ほど前から村の名産として名乗りを挙げた。

 石川地区のソバの作付面積は約五十ha、転作田を含め約十二haのソバ畑を営む米森満さん(44)は、キタワセ、階上の早生種と常陸秋の三品種を植えている。七月下旬から八月中旬にかけて種をまき、収穫は十月いっぱい続くという。

 平成五年には収穫用コンバインの共同購入をきっかけに石川そば生産組合(米森万吉組合長)が誕生。ゆでめんを近隣の能代市や二ツ井町に出荷しているほか、国道101号沿いの農産物直売所「おらほの館」でそぱの販売やそば打ち体験などを行っている。

 鶴形、志戸橋も基本的には自家消費用。鶴形手打ちそばグループ(笠井京子代表)、志戸橋そば研究会(河村香代子代表)が地元に伝わる味覚を伝承すべく、各種イベントなどでそばを提供している。

 いずれも豆乳をつなぎにし、熱湯でこねるのが特徴。志戸橋はコシを出すために大豆の粉を使うこともある。ダシは石川が鳥、鶴形は煮干し、志戸橋が昆布とかつお節。

食用ホオズキ 代名詞的な存在に
 独特の甘酸っぱさ・・・加工品も  上小阿仁村

 ベイナス、ズッキーニ、食用ホオズキなど、他産地に先駆けてユニークな野菜づくりに力を入れている上小阿仁村。特に食用ホオズキは県内唯一の産地で、上小阿仁村の代名詞になった感もあるほどだ。
ベイナス・・・欧米系の丸なすで、ヘタは緑色、果実は紫色。ビタミン類を豊富に含み、さっぱりした風味と料理が楽しめる。料理は、ベイナス肉みそ田楽や即席漬け、細かく刻んでカレーライスに入れると美味しい。
 ズッキーニ・・・ペポカボチャの一種で、イタリアでは最も親しまれ利用されている野菜。低カロリーでクセがなく、料理の応用範囲が広いヘルシー野菜だ。代表的な料理は、ズッキーニのベーンコン炒め、サラダ、即席漬け。

 村の総面積のうち、93%が山林で、農家1戸当たりの農地は七割近くが一ha未満と、典型的な中山間地域の同村。

 キュウリやトマトなどの大規模な施設園芸が難しい地理的条件の下、他産地にはない品ぞろえで産地としての特色を打ち出している。併せて高齢者や女性も取り組める夏場の軽量小型野菜として年々栽培面積が拡大している。

 十三年度の作付面積はベイナスが3.1ha、ズッキー1.6ha。食用ホオズキは二十六戸の農家がハウスと露地合わせて1haで栽培しており、平成十年のスタート時点と比べ十倍に急増した。

 独特の甘酸っぱさが人気で、生食用だけでなくアイスクリームなどの加工にも使用されている地域特産作物だ。

 こうした作物は、農家が実際に栽培する前に、村営の野外生産試作センターが栽培可能性などを検討。これまでも山ウドやコゴミ、タラノメなどの山菜の試作に取り組んできた。

 現在、同センターはピーマンの形をした新しいトマト「ピマート」の試作にも取り組んでいる。
 真っ赤で甘みが強くイタリア料理に最適というのが最大のアピールポイント。村はベイナス、ズッキーニ、食用ホオズキに次ぐ第四の新野菜として注目しており、本年度いっばいかけて村内での栽培可能性を検討する。

 写真提供:北秋田総合農林事務所土地改良課、山本総合農林事務所土地改良課、関係市町村。