「思うぞんぶん」 毎日新聞秋田版 2002.3.25
秋田淡水魚研究会代表 杉山秀樹さん(ざっこシンポにて)

−研究会の活動は。
◆絶滅の危機にある淡水魚の問題に警鐘を鳴らそうと、魚好きが集まった。淡水魚の保護が目的だが、実際に調べないと何も言えないので、歩いて現状を調べている。昨年は沼や川でブラックバスの駆除をしたり、ため池で小中学生と一緒に魚を取り面白さを知ってもらった。

−県内の淡水魚はどのようなものがいますか。
◆仙北地方の湧水、コンクリート護岸されていない雄物川、米代川や田んぼの水路、ため池など、さまざまな環境が残っているから、驚くほど魚類層が豊かで約130種いる。雄物川水系と横手平鹿、仙北地方と山形県の一部にしかいないイバラトミヨ雄物型、かつては関東以北の本州にいたが今はいなくなってしまったシナイモツゴなど、世界で秋田にしかいない魚がすんでいる。

−しかし、多くが絶滅の危機に瀕しています。
◆原因の一つは、河川改修や水田整備で魚のすむ環境がなくなってきたこと。もう一つはブラックバスなど外来魚が在来魚を食べ尽くしてしまう問題。鳥は空を飛び、獣は足で歩き動くことが出来るが、魚は環境が悪くなっても川や沼から逃げ出せない。いずれも人為的問題なので人間のカで解決しなければいけない。

−ブラックバスによる被害は。
◆バス釣りのメッカになってしまった八郎湖では、昨年のブラックバスの漁獲量が約20トン。ハゼ、エビ類が極端に獲れなくなっている。調査した横手市のため池では、以前シナイモツゴがいたのに、バスが放されて以来いなくなった。沼の8割以上がバスだったり、小魚が一匹もいない沼もあり、バスの腹を裂くとバスが出てくることもある。生態系が変わってしまった。県内に3000以上あるため池のうち1割以上に生息していて、49市町村で確認された。

−ブラックバスが県内でも広がった原因は。
◆ブラックバスは人が持ってこない限り分布が広がらない。密放流が原因。82年11月、秋田市でブラックバスが初めて確認された時、私たちに危機感がなかった。将来大変なことになると当時からキャンペーンを張っていればよかったと責任を感じている。96年にバスの放流を禁止する県の規則が施行されてからも、ものすごい勢いで広がっている。実際に違反で捕まった人はなく、闇夜に隠れて放流している。人気タレントもバス釣りをやっていて、若い人たちは疑問を感じていない。

−バス釣りが地元に経済効果をもたらすとの意見もありますが。
◆八郎湖は全国から釣り人が来る。ホテルを建て店を出し、産業にすればという意見もあるが、賛成できない。八郎湖は漁場であり、楽しみを優先させて、漁業で生計をたてる人が生活できなくなったらどうするのか。さらに、バスがバスを食い尽くし、魚がいなくなれば釣り人も来なくなる。

−在来魚を守ることの意義は。
◆鳥や獣と違い、何万年も同じ場所で選別、淘汰を繰り返し、その場にあった特殊な個体群を作っている。それをつぶすのは一つの財産をなくすこと。そして、一つがいなくなると、複雑な生態系すべてが崩れる可能性がある。それに、トゲウオがいるのが秋田のアイデンティティーであって、雄物川から北限のアカザがいなくなれば、単なる水路でしかない。魚がすむから初めて川、湖と呼ぶんですよ。水路、水ためではなくて。
在来魚の素晴らしさと、置かれている危機的状況を教えるのは表裏一体。研究会としては、具体的に魚はどう生活し、どういう問題があり、それをどう考えるか、子供たちに伝えていきたい。

地域面がわかる ブラックバス 食害で生態系に影響

Q ブラックバスってどんな魚?
A 正式にはオオクチバスといい、アメリカ南東部原産の肉食魚。体長20〜40センチで流れの緩やかな所にすむ。食欲旺盛で小魚・エビ・カニ類を食べるほか、小鳥鳥、ネズミを食べることもある。ルアー釣りのターゲットとして人気が高く、食いついた後にジャンプしたりファイト(魚のひき)が強烈なため釣り人をとりこにしている。

Q 日本にどうやって広がったの?
A 1925年に神奈川県芦ノ湖に移入されたのが最初。ルアー釣りの人気魚なので、各地で放流された。45都道府県に生息しているが、他の魚を食い尽くすため元々あった生態系を崩すと問題になっている。国内でバスの放流が認められているのは、山中湖、西湖など一部のレジャー場だけ。県内水面漁業調整規則ではバス類、ブルーギルの放流を禁じているが、密放流が止まらないのが現状。

Q 昨秋、ブルーギルが県内でも確認されました。どんな影響が?
A 稚魚や卵を食べるアメリカ原産の雑食魚で、ブラックバスの餌として放流される。県内ではまだ確認されていないが、流れの速い所にすみファイトが強烈なコクチバスと一緒に入れば、オオクチバスと合わせて県内の在来魚が食い尽くされる恐れがある。今、オオクチバスに対して毅然とした態度をとり、ブルーギル、コクチバスを水際で防がないと、生態系にとって取り返しがつかなくなる。 【野口武則】