農村環境技術研修
【生態系保全(北海道・東北ブロック)コース】
 平成15年10月20日〜21日に(社)農村環境整備センター主催の農村環境技術研修会が大曲市で開催されました。「水源環境に応じた生態系保全」をテーマに、北海道・東北から、国・県・市町村の農業農村整備事業に携わる職員、111名が研修を受講しました。
 開催地の大曲市が位置する仙北平野には、絶滅危ぐ種TAに分類される、イバラトミヨ雄物型が生息しており、ほ場整備事業でのイバラトミヨを対象とした生態系配慮事例等が発表されました。

 研修会のはじめに、開催地である仙北地域振興局の鵜沼農林部長よりあいさつ。  主催者である、農村環境整備センターの川嶋専務理事のあいさつ。 
 仙北平野農村整備事務所の佐々木主幹・大山技師による イバラトミヨ雄物型を主とした生態系保全について、ほ場整備事業での具体的な取組事例を発表。
 生態系保全水路の実施後について維持管理作業が非常に重要であり、そのためには事業実施後の生態系保全に対する明確なビジョンを見据えた地元合意形成が必要であることを説明。
 地下水研究の第一人者である、秋田大学教育文化学部の肥田教授による講演。
 ほ場整備事業実施地区での地下水位の調査結果・事業における地下水への影響や、事業での地下水保全対策盛土等の講演をいただきました。
 イバラトミヨ雄物型の生息域は湧水と密接な関係があるため、地下水の状況を把握することが、湧水固有の生態系保全につながります。 
 生態系保全実施事例の現地見学の様子。写真は、仙北郡千畑町のほ場整備事業「土崎小荒川地区」での生態系保全水路。イバラトミヨ雄物型等に配慮した落差工で、途中に隔壁を設けて、魚が遡上出来る形状となってます。また、水路に水草を繁茂させており、この草を刈る作業などの維持管理作業と、生態系保全との調和をとっている地元の方々のご努力が伺えます。
 現地見学時に生態系保全水路で捕獲したイバラトミヨ雄物型。なお、容器の1マスが1cmです。
 捕獲したイバラトミヨは、見学後にもちろん放流しました。   
   
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 仙北郡太田町のほ場整備事業「駒場北地区」にある生態系保全池。
 ほ場整備以前の土水路の代替措置として、この保全池が作られました。

 肥田教授の講演で話題に上がった、土崎小荒川地区の地下水観測小屋を見学。
 研修会参加者は、様々な保全対策を食い入るように見学していました。
 秋田県立大学短期大学部の神宮字助教授による講演。
 イバラトミヨを保全対象種としたほ場整備事業の取組について、ミティゲーション5原則の概念による実施事例の紹介・保全対策に対する生態系の観点からの事後評価等の講演をいただきました。
ミティゲーションとは
開発を行う場合に環境への影響を抑えるために取る対応策のことで、次の5段階に定義しています。
ミティゲーション5原則の定義
回避 開発を変更して、影響を回避する
最小化 影響を最小化する。
修正 影響を受けたものを復旧させる。
軽減・除去 影響を直接受けない環境を保護し、相対的に影響を軽減させる。
代償 影響を異なった地点で代償する。
 
 農村環境整備センターによるワークショップの進め方についての説明。
 ワークショップとは、集会の参加者全員でアイディアを出し合い問題解決をしていく集まりのことで、様々な立場・意見がある中で中立的に問題を解決する手法の一つであります。
 近年では、農業農村整備事業を実施するにあたってワークショップ形式で方針を決定している事例もいくつかあります。
 ワークショップを進める上では、「ファシリテーター」と呼ばれる、中立的な立場から、集会の議事進行を努める人の役割が非常に重要であるとのことです。 

 ワークショップの説明を受けて、実際に受講者がいくつかのグループに分かれてワークショップを体験してみました。
 テーマは「水環境をどのように整備するか」です
。 
 最後にグループのファシリテーター役がワークショップでの検討結果を発表。
 実際にワークショップを体験してみると、予想以上に沢山の意見が出て、舵取り役のファシリテーターの重要性を認識させられました。
 
 今回の研修では、具体的な取組を事例とした内容の講義が多く、受講者にとっては自分自身の業務に直接的に役立つ研修であったと思われます。

 現在、農村に対する地域住民のニーズは、農作物の生産の場としての要望だけでなく、生態系保全に対する要望・農村景観に対する要望など、以前に比べて多様化してきております。これらの多様化したニーズに応えるためにも、今回の研修が役立つのではないかと思われます。

取材・編集:農林水産部 農山村振興課 農村整備計画班