Doctor Ian W.Makin Visit(International Water Management Institute)
Water of the world and food are told.

 2025年、世界人口は80億人を越え、3人に1人は水不足に、5人に1人は飢餓に苦しむと予想されている。食料の大半を外国に依存する日本は大丈夫だろうか?

 国際水資源管理研究所の水資源情報部長イアン・メイキン博士は、世界の水資源と食料予測の分野で優れた研究活動を展開しており、その成果はBBC放送やタイムズ誌でも広く紹介されてきた。

 世界のかんがい改善と食料安定確保に関する研究のために、同博士のグループが秋田県雄物川流域を調査。IWMIの日本代表理事をしている秋田県立大学短期大学部真勢徹教授の企画で、2000年5月17日、メイキン博士の講演会が同短期大学部で行われた。

 世界のトップを走るイアン・メイキン博士は、食料戦略システム「PODIUM」と世界の気象情報「World Water Atras」をパソコンを使いながら、世界の水と食料の未来予測について語った。

 食料戦略システムは、現在より25年先の2025年を予測する。 すなわち、2025年には、どれだけの人口になるか。その人口に対してどれだけの食料が必要か。その食料をどうやって作るか。そのためには、どれだけの水が必要か。という手順で、将来を予測する。
 このモデルの特徴は、条件を変化させて簡単にシミュレーションできる点にある。

  日本では、信頼できる統計情報があるから、こうしたシステムの必要性は乏しいが、発展途上国は、データそのものの信頼性が乏しく、こうしたモデルによる将来予測は、極めて有効であるという。なぜなら、統計が乏しい、あるいはデータに信頼性がない国でも、条件である変数をいろいろ変化させて簡単にシミュレーションできるから、試行錯誤によって、現実に近い予測も可能である。

 インドを例に試算した結果では、人口9億3千万人(1995年)から43%増の13億3千万人へ。必要穀物量は174百万トンから263百万トンへ、現在の51%も食料を増産しなければならない。

 これをどうやって作るか。そのための水を確保できるのか。事態は深刻であり、見通しは暗い。

 2025年の世界全体では、人口33%増、これに対応したかんがい農地は29%も増やさなければならない。さらに、水管理による節水を見込んでも、全体の水需要は22%増やさなければならないという。(農業用水としては17%増)

 北の先進国では、深刻な水不足にはならないが、エジプト、中近東、インド、中国北部は、物理的に水がない。赤道より南側は、財政的な問題で水需要に対応できず、水不足に陥ると、同博士は予測する。

 もはや巨大なダムをつくる適地もなくなった。これからは、日本の水田農業のように水を管理する土地改良区のようなしっかりとした組織の育成と流域一帯のリサイクルシステムの構築による節水、そしてダムではなく、地下水かんがいが主流となるだろう。その際、地下水をどう涵養していくかが課題であると語った。
 メイキン博士グループは、2000年5月11日、秋田県庁農地計画課を訪問。世界的に見ても最も優れた水管理制度である日本の土地改良制度を世界の途上国の参考とするために、来日。先進事例に選ばれた秋田県雄物川流域の調査、資料収集を目的に来庁した。
 左の写真:右からメイキン博士、バンダラゴダさん 右の写真中央が真勢教授
 メイキン博士の講演。パソコンを使って難解なシステムをビジュアルに説明。メイキン博士の講義を真勢教授が同時通訳する形で行われた。
 これらのモデルは、インターネットで誰でもダウンロードできるフリーソフト。ユーザーから使ってもらって、不備な点を改善していきたいという。
 アドレスは、http://www.iwmi.org
 質疑応答では、地球の温暖化と塩害について、質問が出たが、特に塩害については、深刻。パキスタンでは、1400万haのうち600万haが塩害で耕作放棄されているという。 インドでも、不完全なかんがいで毎年100万haの農地が減少しているという。さらに砂漠化、地下水の枯渇が確実に進行している。
 このまま推移すれば、世界は確実に、水不足、食料危機に陥るというメイキン博士の予測に対し、食料の大半を輸入し、飽食に明け暮れるニッポン。そんな日本を見ていると、凶作と飢餓の歴史をもう一度思い出してほしいと思うのだが・・・
 最後に「初めて来日したが、秋田は、山も田んぼも美しい緑で幸せな気持ちになれた」と語ったのが強く印象に残った。