パネルディスカッション
「水土里とともに子どもたちを育む学習活動の在り方について」

 パネルディスカッションの概要は次のとおり(要約)


 

出前授業時の子どもたちの様子とその成果について
 

湯沢東小学校
・農業の歴史や農業の大切さが子どもたち(5年生)に十分伝わったと考えている。
・ため池の水について子ども達は「きれいだろう」と予想していたが、実際現地で生息している生物から「少し汚れている」ことが判明。汚れている水にも住む生物がいることに驚き、命の尊さを感じ取ったようだ。
・大台堤では、農業を営むため先人が苦労して造ったこと、農民の願い、水の大切さなどを感じ取った。
・田圃に入ったり、草をむしったりなどの体験が今の子どもたちには大変不足している。
・今回の学習で次の学習への意欲が生まれたと感じている。

稲庭小学校
・4年生での「農業の歴史」については理解が難しそうに感じた。
・農業農村が色んな役目を果たしていることに子どもたちは、びっくりしていたし、感激していた。
・与惣右エ門堰について3年生の時から触れてきたが、現地に行って実際に見て、触ることが出来て良かったと感じている。
・イワナのつかみ取りは、子どもたちが川から離れている(事故防止のため近づかないよう指導している)状況の中、貴重な体験となった。
・この様な機会を与えてもらい環境教育の上でも豊かな心を育てる上でも大変良い経験をさせていただいたと感じている。

新成小学校
・子どもたちにとっては、大変貴重な体験ができ、本当に良かったと思っている。
・子どもたちは、プロジェクターでの説明を受けるなど丁重に授業をしていただき、興味深く聴くことができた。
・子どもたちのお礼の手紙や感想文に、新しい知識を得た喜びや「もっと稲の歴史を知りたい、松倉ダムを見たい、学校の田んぼも大切にします。」など、授業が終わってからも子どもたちの意欲、やる気が表れていた。
・子どもたちは、松倉ダムや用水路を見て人々が苦労したり頑張っていることを肌で感じ、心も豊かになっていくようだと感じている。

皆瀬小学校
・農業の歴史について映像で分かりやすい解説をいただいた。
・昭和30年頃と今の農作業時間の比較で1/6に軽減されていることに、私も子どもたちもびっくりした。   
・様々なコメのサンプルに触れたり、自分たちが育てたコメの食味数値を測定したり、食味の体験が楽しい授業となった。
・地域の方々の協力でお米の大切さ、お米が出来るまでの難しさも体験でき、とても楽しく学習することができた。
 
 

出前授業の課題・要望について
 

皆瀬小学校
・授業等の関係で、事前打ち合わせの時間を十分に取れない。打ち合わせ効率の向上にFAX等による相互情報交換を活用していきたい。
・子どもたちは授業に夢中になってしまい、どうしても時間が長引いてしまう。双方が、時間設定をきっちりすることを痛感した。
・体験を通した学習は、子どもたちの興味、関心が一層深まるのでとても良かった。これからもお願いしたい。

新成小学校
・色んな学校の出前授業を自ら見学し、中身を把握する事で次の学習に役立てる事ができる。打ち合わせだけでは、難しい部分がある。 
・出前授業のテキストを先生と一緒に作り上げていけば、より良いものとなる。

稲庭小学校
・4年生には、歴史的なことは難しかったようだ。学年のレベルに応じてやっていただければ良いのではないか。そのためには中身の摺り合わせを十分に行う必要がある。意識のずれみたいなものもあるのかなと感じた。

湯沢東小学校
・教師の役割を明確にする事が大事だと思う。学年によって捉え方も理解度も違ってくるので教師がどこで関わるか、事前の打ち合わせで確認しておくべきだ。
・学習の前後を大切にし、子どもたちの学習の深まりや広がり(疑問やもっと解決したい事など)に結びつけることが必要だ。
・授業後、子ども達が(疑問点などを)メールで質問したり、他の学校の実践例などをネット上で見る事が出来れば、より体験的な学習が深まると考えている。

三浦農村整備課長
これといって、それをしなければならないという事は有りません。4・5年生に農業の基礎的なところを提供するということでやっていますが、まだまだ学校側の要望に追いつけない状況でありますから、今日のような場でそういうものを出していただければ、それに沿ったお手伝いができると思います。それから、今日は出前授業を行っている様々な機関が集まっておいでです。これらの機関と連携して、学校からの要望をその内容に沿ったもので提供したいと考えています。

加賀コーディネーター
意識のずれは事前の打ち合わせ等で十分解消されていくと思います。



 

フロアーの方からの意見、質問について
 


○○小学校
@「なぜ今学校教育現場との連携」を重要視されているのか、明確にしていただけると双方の求めるものが合致して、摺り合わせも出来るでしょうし、この点をお話していただけると大変有難いと思います。
A私どもの学校では、出前授業メニューに無いものを組んでいただきました。子どもたちに何を教えたいかというところを明確にすることが大事です。学校では絶対に準備出来ないものを準備していただき、バスまで用意していただき、普段は入れないところにも入れていただき本当に有難い授業と思っています。しっかりと狙いや意義をもって、双方で話し合って、より充実した活動をお互い作っていくというのが、この事業の一番の狙いではないかと思います。これからずっと携わっていく者としてこのことを大事にしたいと思います。

@について高畑雄勝地方土地改良協会長
水土里ネットと言いますと、改良区をさしております。今大変核心的な質問があった訳でありますが、ちょっと話しが変わりますが私どもの年代になりますと特に小さい時からの教育の大切さを特に痛感している年代でございます。
ちょっと話しは大きくなるのですが、今地球規模での大きな課題として必ず4点が指摘されます。「人口の爆発的な増加」「食料と水の極端な不足」「環境の問題」「エネルギーの問題」の4つです。これは、考えてみますと総論と各論でかなりの違いがございまして、環境とエネルギーの問題はさておいて、この人口の問題は世界で3秒間に1人の割合で増えている。しかし、そうした増加傾向に反して、我が国の場合は今少子高齢化が非常に大きな政治的な課題にもなっており、日本がおかれている現実と、その地球が抱えている大きな問題点一つとっても、大きな食い違いがございます。それから食料の問題でございますが、これも今日本は金さえ出せば、好きな物を好きなだけ食べることができる状態。まさに飽食の時代であり、一方では地球上のどこかで常に飢餓に苦しんでいる国の報道がテレビ等でされております。大雑把に申し上げて、世界の人口は先進国3割、発展途上国7割と言われておりますが、相対的な食料の7割が、3割の人口の先進国で消費されております。したがいまして、7割の人口を占める発展途上国はたった3割でございますから、常に飢餓の状態に置かれているという事が明白です。加えて今、砂漠化という事が大問題になっておりますし、極端な水不足という事を考えますと、将来的にはこの人口の増加を踏まえ、また水不足を考えても食料の不足という事は避けて通れない課題になって大きくのし掛かってくると言われております。そうした中で日本の食料は、飽食時代を迎えているとは言いながら、自給率は40%にすぎない。この際、こうした地球上の大きな問題を抱えてる中で、やはり私は農業農村が果たしていく役割は非常に大きなものがあると感じています。これは東京大学の総長をされました吉川先生も言われている訳でございますが、21世紀は20世紀と違って、工業が農業化される時代になると。やはり、農業農村が果たすべき一つの役割として私はこれを大事に認識をし、また育てていく必要があり、その事を正確に理解をし、また学んでこれからの人生に貢献していただきたいと。その為にはやはり教育との連携を強めながら、小さいお子さんからこうした現状というものを十分に意識していただく必要があると思っています。中国の毛沢東が言われております「少年は午前8時の太陽である」。これからの時代を背負うのが小学校の生徒さん方であります。我々の年代になりますと、その点午後4時の太陽位な感じがする訳でございますが、そこで水土里ネットとしては、今特に維持管理している農地と水、これが一つの作物を養成している大きな要因になっております。今では地域の共有財産ともいえる、貴重な農地の水、この維持管理にあたっているのが土地改良区、いわゆる水土里ネットでございますが、残念ながら一般的には「土地改良区って何やってるんだ」とか「どんな団体なんだ」というのが大方の認識だろうと思います。改良区というのはどういう仕事をしているのかという事が、ほとんどご理解されていないと思いますが、最近では農業用水路一つとっても、食糧増産する為の農業用水である他に、防火用水だったり防災用水だったり、あるいは都市的な生活用水としても十分な効用を発揮している訳で、これがいわゆる多面的機能という言われ方をしています。こうした点について、まず学習の場で現実を見ながら学習をし、ご理解をいただきたいというのが、水土里ネットとしての立場であり、お願いであります。しかし、水土里ネット、いわゆる改良区だけでは力に限界がございますから、県と水土里ネットが一緒になって出前授業を行っているところであります。
先ほど加賀先生が冒頭に「お互いが素晴らしい価値のある良い事をやっておりながら、この接点がなかなか無かった」とおっしゃっていましたが、それを私も非常に痛感してきた一人でございます。それが去年から始めたフォーラムによってその接点というものを見出すことが出来ましたし、先ほど石橋先生からご紹介された様な評価が成されているという事は、本当にこのフォーラムを開催していただいた県並びに教育事務所のお陰だという事で、私は感謝の気持ちでいっぱいでございます。そうした思いを込めて、何とか学校教育の中で、それも小学校4〜5年生というあたりは、私どもは各学年の学力の程度は全く分からないのですが、先程のお話しをうかがってもやはり子供さんというのは素晴らしい積極性、鋭いものをもっているという事で関心しております。少しでもご理解いただければ有難いと思っております。



今後の出前授業の在り方について
 


稲庭小学校
・農業の大切さということを実感できる機会をたくさん持つことが教育の場としても大事なこと。
・子どもが農業に係わる機会というのが大変減ってきている、水土里ネットの持つ専門性や、我々が知らない貴重な情報を是非教育現場に取り入れもらいたい。  
・子どもたちは、食べ物は買って食べるものと思っている。そんな中で、自分で育てる喜びとか、自分で収穫したものを食べおいしいと感じる、この様な心に響く、心を育てる事が大変大事だと思う。

皆瀬小学校
・直接体験で、授業の内容がとても濃くなり、興味・関心が高まり学習内容を深く理解できる。体験を通した活動を今後もお願いしたいと思っている。

湯沢東小学校
・この授業は、工夫と計画によってどんどん広がっていく可能性がある。だからこそ、どんなことを狙って、どんな力を付けるのか。このことについてお互いに協議しなければならないと思う。
・体験はただの知識ではなく体感できる良さがある。今回の様な出前授業を今後も続けていきたいと思うので、情報交換を密に行っていただければと考えている。

新成小学校
・出前授業は、農業に携わる人々の仕事上の工夫や願い、自然との関わりを自分の肌でしっかりと感じ、子どもなりに農業の現状と課題を捉えることが出来る。また、資料を問題解決のために活用できる様になる。
・どの部分に協力してもらえばより効果的なのかということを、自分たちでも勉強し、研修したい。

 
 

フロアーの方からの意見、ご質問
 


菅 水土里ネット山田五ケ村理事長
日頃より総合学習、体験学習の一環として、地域における自然環境、食の文化、歴史をテーマにその意図、大切さを積極的に取り組んでおられます事に改めて感謝申し上げます。そして、今日2回目のフォーラムに参加しましたが、昨年と比較しまして力強くなったなという感じをもっております。そういう意味では非常に大事な事業だと思っております。折角の機会でございますので、私から要望という形で意見を述べさせていただきます。「我が国の子供達の学力が低下している」という新聞報道がございました。その関連か、先般19日付の魁新報の朝刊に、総合学習の見直しという記事が掲載されておりました。ゆとり教育が転換を検討されているような内容でした。唖然とさせられました。子供達の基礎的な学力低下を決して良いとは思いませんが、問題を解消する為の手段・手法に大きな違いがあるのではなかろうかなと思っております。私は21世紀を担う子供達にとって、夢と希望を育む教育が最も大事であると。そして心身共に健康を育む教育であろうと考えています。その為に生まれ育っている自然環境の中で、先程パネラーの先生方が言っておられました様に、体ごとぶつけていくことが大事であると。そしてその中から得る事が最も大事であり、素晴らしい大発見が数多くあると思います。そうした意味から、まさに農業・農村はさまざまな教材を提供してくれる学習の場であり、体験の場であると思います。そして、そこに暮らす人々が、子供達にとっては生きた知識を授けてくれる先生だと私は考えております。私達、農業・農村と共に歩んでおります水土里ネットでございますが、先人達の築き上げてきました農村社会や、水利施設を時代を担う子供達に伝えるべく、21世紀創造運動というものの一環として地域の小学校の社会科学習のお手伝いをさせていただいております。また以前からも、地域の小学校から要請があれば、農業水利施設巡り等々の学習などを行ってきた経験があります。事実、ここに当土地改良区の倉田くんという職員がおりますが、彼も山田小学校時代に農業水利施設である山田頭首工や切畑ため池などの見学をしております。そして、地域の田んぼを潤す農業水利施設をその目で体験し、その後の農業に対する考え方を変えるほどの感動を覚えたと話しておりました。先般21世紀創造運動の会議がございまして、その中で当湯沢雄勝地域おける、教育機関、雄勝地域振興局農林部農村整備課、水土里ネットが連携して取り組んでいる事に対しまして、大きな高い評価をいただいております。こうした事業を継続する事が将来、明るく豊かな地域社会を担う人材が数多く生まれ育つという事を確信しております。最後に、寺田知事も講演の度に、「21世紀は教育・健康・環境がキーワード」として述べております。どうぞ今後ともこうした学習活動を力強く継続していただく事を要望いたしまして終わりますが、先程以来、パネラーの先生方から今後も前向きにこれを進めていきたいというお話しがたくさん出まして、本当に力強く感じております。

○○小学校
本校も5年生を中心にたくさん勉強させていただきました。そういう中でお願いなんですが、先程高畑会長さんが農業の果たす役割を学んで欲しいのだとの事でしたが、今子供達が農業・農村について、将来どうなれば良いのか、農業の未来などについて知ることができれば、「農家っておもしろそうだ」などと思えるのではないでしょうか。今は先人の知恵とか過去について学んでいる訳ですよね。現状とか。今後どうならなきゃいけないのかといった視点は欠けているのでないでしょうか。もっと希望を持てる様に提示・提案してもらえれば、じゃあ私達はどうしていかなければいけないのか、といったまた新たな学習となっていく様な気がします。そのような視点の学習というのが一つ考えられるのではないかなという期待をしています。

 
 

アドバイザー(川原農山村振興課長)からの意見
 


川原農山村振興課長
このフォーラムに参加させていただき非常に勉強になりました。
まず、教育・農業団体・行政が連携してこれだけ学校教育で農業に関する取り組みをしているところは、雄勝の他はないと思います。
若い先生達のご意見を伺って、手応えは十分感じていると思いました。そして、県としてはまだまだ勉強の余地があるというのが感想です。
出前授業について、先生方から「前後の打ち合わせの時間がもう少し取れないか」、「学校によってできない事もある」、「授業の進め方、進み具合などに合わせる必要がある」など、ご意見がありました。お互いに時間の制約がありますが、これからもっと摺り合わせをして行く必要があると思いますし、水土里ネットや地域振興局との摺り合わせで、これは解決していける部分と思います。
県が出前授業と言っているうちは、まだまだそれは初歩の、ちょっと生意気な言い方になりますが、既製品を届けている段階なのだと思います。
先程グリーン・ツーリズムのところで少しお話しましたが、農村に行ってみたいという都会の人たちはある意味非常にわがままです。一つのメニューだけでは飽き足らない。グリーン・ツーリズムがハードを造るようにいかないのも、そうしたところに理由があると思います。ですから、毎年150人もの人が「秋田花まるっ大学」で農家民宿やレストランのノウハウを学び、色々試行錯誤しながら、開業のチャンスを見極めています。
出前授業もこれから段々とステップアップを図っていかなければならないと思います。ニーズがあって、ニーズに対してどのように対応していけばよいか。直売所も同じで、最初は物珍しくて買ってくれるのですが、同じ物を並べていては、だんだん売り上げが落ちてきます。そこで、どうすれば良いか、商品開発です。客がどういうニーズをもっているか、マーケテングして商品開発する。そこにたどり着かないと目的はなかなか達成されません。
先生方から、今後の進め方について、メニューを総合した形で提供していくことやネットの活用というような御提言がありました。世界の情報が入るわりには地域の情報が不足していることも事実と思います。これまで取組まれた授業のデータを蓄積し、今後に生かしていく取り組みも大事です。今は情報化時代。そういう情報を活用しない手はないわけで、どんどんホームページに公表していく必要があると思います。
我々もホームページ「美しき水の郷あきた」に水土里ネット関係や農業関係の情報を蓄積中です。

いずれにしましても、このような取り組みが継続されていくことで、地域社会の活力の素である子供達が、地域の特性や産業を学び、大人達も関心を持ち、ひいては地域が活性化していく、と思います。
今日のフォーラムに参加された先生方、農業農村関係の皆さんのがんばりや意気込みなどを考えれば、発展の可能性は十分にあると感じました。