Hachimantai/Part Tamagawa source way

 十和田八幡平国立公園の一方の核となる八幡平は、樹氷と温泉群で有名な山域で、四季を問わず、観光客や登山、アウトドアなどで賑わっている。鹿角市から八幡平に延びる沿道には温泉が多く点在し、アスピーテラインの近くには大沼、後生掛、蒸の湯、大深など、古くから山の湯として親しまれてきた。山腹や低地にはブナ林、高山帯にはアオモリトドマツなどの針葉樹が生い茂り、見事な対比を見せてくれる。

 山の湯煙が原生林にたなびく昔の面影は薄れてきているが、茶臼岳から黒谷地、源太森、八幡沼に至る冷涼な高原地帯や南八幡平縦走コースは、いまだ原始性の香る高層湿原や針葉樹の森に包まれている。さらに深い谷底を走る玉川源流部は、流程が長く、水量も豊かで、訪れる人も稀な原始境となっている。ブナとアオモリトドマツなどの混交林は、白神山地や和賀山塊とは、また一味も二味も違う趣がある。

初冬の八幡平より駒ケ岳を望む(鹿角市)
モッコ岳(1,578m)から大深岳(1,541m)の稜線沿いには、沼が点在し、アオモリトドマツの美林、その谷底を流れている川が玉川の源流、大深沢である。 八幡平稜線をゆく。360度のパノラマを楽しみながら歩く。南八幡平縦走コースは、チシマザサが密生し、トレースが困難な場所もあるので注意が必要だ。さらに稜線から、沢に入るには、密生した笹で迷いやすいので磁石と地図は必携品だ。
 この滝は、幅が長く水量も多いことから「ナイアガラの滝」と呼ばれている。
 ここまで至るには、泊まりを覚悟で沢を歩かないと、辿り着けないが、源流部に懸かる滝としては、県内一冷涼感を誘う美しい滝である。
 大深沢は、大深岳を源流とし、流程18キロ、十指に余る枝沢を集め、五十曲地点で玉川本流へ流れ込む。その名が示すとおり奥が深く、長大な渓である。
 秋田フキは、茎の長さが1.5m、葉幅は1.3mにもなるお化けのようなものだが、この原産地が北秋田の長木沢とこの大深沢だと言われている。人跡稀な沢には、決まって伝説も多い。
 仙北マタギの伝えによると、玉川源流の山岳地帯には、巨大な大熊が2頭棲んでいたという。「大深の大熊、小和瀬の小熊」と呼ばれていた。大熊は、足跡が輪カンジキをつけたくらい大きく、吼える時は、山峡が崩れるような凄い吼え方で、それを聞いたマタギは、身の毛もよだつ思いで、蒼くなって逃げたという。
 昔から、大深沢の源流へは、天狗でもなければ入り込めないと信じられていた。それだけに、今でも人跡稀な原始性をとどめている。
大深沢の初秋を彩るダイモンジソウ。小さい花だが、よく見ると「大」の字に見えることから、ダイモンジソウの名がついた。清流と苔むした岩に咲くダイモンジソウの花は、一級の芸術品だ。 八幡平のショウジョウバカマ。春の雪解けを待って咲くところから、ユキワリソウとも呼ばれている。バックの白は、ミズバショウ、人間には毒だが、熊は大好物。
八幡平稜線に咲くエゾオヤマリンドウ。秋を代表する高山植物。 サンカヨウ。深山の林内に生える多年草。茎の先に2cmほどの小さな白い花を開く。花が終わると、青紫色の実をつける。
深山幽谷に懸かる2段10mの滝。両岸が圧縮され、ブナと針葉樹が谷を埋め尽くし暗いが、それだけに流れ落ちる清冽な流れが際立って見える。「聖なる水」とは、こんな流れを言うのだろう。 八幡平・後生掛温泉。こうした山の湯は、古くから農家などの湯治場として利用されてきた。現在も湯治客はもちろん、登山、スキー客の専用宿として利用されている。八幡平は、長い歴史を持つ素朴な温泉の宝庫。