鷹使いは生き物を使って生き物を捕らえる狩猟であり、鷹匠の本領はクマタカの調教にある。猛禽の性質を逆手にとって、高度の計算によって飢えさせる技術である。単純に言えば、仔鷹のうちに食えるだけ食わせる。鶏一羽を大きな肉のまま与えると三日ほどでたいらげるが、食えば食うほど食わずにはおられなくなる。餌を見れば我慢できずに襲撃する野生の本能を引き出す。そして一方、エサをもらうためには、人間に従うようにさせる。クマタカの猟の本能と人工の飢餓の微妙な調和を図るのだ。
 「鷹とおれは一心同体」と鷹匠はいうように、深い愛情なしにクマタカを飼育し調教することはできない。しかし、厳しいトレーナーのもつそれである。調教はマンツーマンの真剣勝負であり、道楽半分の遊び心で育てると、獲物に殺されてしまうような生命力の弱い鷹になってしまう。鑑賞愛玩の飼い鷹でもなく、自然の猛禽でもなく。狩猟の鷹として人に創られたクマタカは、しかしもはや、山にかえしても生きてゆけぬ宿命を持っている。夏の間に十分にエサを食い肥太ったクマタカは、鷹狩りの季節に備えて、秋の絶食と訓練期に入る。エサを少なくし飢えさせることによって、獲物を攻撃する火力を高め、そして獲物をつかんで飛び去る余力をそぐ。クマタカをぎりぎりの限界で使う体力の管理に執心するのである。
(野沢博美写真集「鷹匠」解説・小坂太郎より)
夏でも時々トヤの外に出す。初夏を迎えるとトヤから鷹を出して、夏用の鷹小屋に入れる。ジョウロで水を掛けてやることもある。
土田一さんと痛んだ古い羽を切る。次のシーズンまでには、新しい羽が生えそろう。 羽を切り落とした鷹には、夏の間、エサを豊富に与え、体力をつけさせる。
狩りのシーズンを控え、雪山での訓練。 鷹を止まらせるため、左手にはめている大きな手袋をカケという。鋭いツメでつかまれてもいいようにと、ラシャやコールテンなどの強い布で作り、中には真綿や脱脂綿が分厚く詰められている。
最初は飛べないから山に連れていって放す。バタバタしているうちに飛べるようになる。手に戻るようになったら、飼いウサギを山へ持っていってつかませる。
空の王者・クマタカの飛行。翼を広げると1.5mにもなる。タヌキ、キツネにも襲いかかる力をもつ。
時速は何と200キロ。 最後の鷹匠・武田宇市郎さんとクマタカ。「鳥と人間と自然」が見事に調和した世界は、見るものを感動させる何かがある。武田さんの顔には、マタギ50年の年輪が刻まれている。