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十和田湖水質・生態系改善行動指針


〜恵み豊かで澄んだ水、十和田湖を未来の子供たちへ〜


平成13年8月


青  森  県
秋  田  県



目    次


スローガン〜 恵み豊かで澄んだ水、十和田湖を未来の子供たちへ
1 行動指針策定の趣旨
2 行動指針の基本事項
   (1)指針の性格
   (2)指針の目的
   (3)指針の進行管理
3 取り組みの内容
4 具体的な取り組み内容・方法
   (1)汚濁負荷量の削減
   (2)水産資源の管理
   (3)沿岸域の保全と管理
   (4)モニタリングの実施
   (5)環境保全意識の向上
5 資 料
   資料1 十和田湖水質・生態系改善施策体系図
   資料2 十和田湖の水質(COD、透明度)とヒメマス漁獲量推移


スローガン〜
『恵み豊かで澄んだ水、       
    十和田湖を未来の子供たちへ』



十和田湖のきれいな水と豊かな恵みを
次の世代に引き継ぐため、私たち一人
ひとりがこのスローガンのもと、十和
 田湖の自然環境に配慮し行動していく。

1 行動指針策定の趣旨
 十和田湖は、青森・秋田県境に位置し、十和田八幡平国立公園を代表する重要な自然資源である。
 十和田湖の魅力の一つは、その湖水の清らかさであり、昭和初期には透明度が約20mあったとされ
ている。しかし、平成2年度には透明度が10mを切り、水質は昭和61年度以降、最も厳しい環境基準
(COD値1.0mg/L以下)を達成できない状況が続いている。
 この原因を究明するため、青森県が平成7年度から環境庁国立環境研究所(当時)と共同で実施した
「十和田湖水質汚濁機構解明調査」の結果によると、昭和60年頃から、ヒメマス、ワカサギ、さらには、
これらの餌であるプランクトン等が構成する生態系に変化が生じ、この現象が水質に影響を及ぼしている
可能性が認められた。
 また、平成10年度からは、水質改善及びヒメマス資源量回復のための具体策を提言することを目的と
した「十和田湖水質・生態系調査」を環境庁国立環境研究所(当時)、水産庁さけ・ます資源管理センター
(当時)、青森県、秋田県が共同で実施し、平成12年度にこの調査による提言「十和田湖の水質・生態
系管理に向けた提言」が提出された。
 この提言をもとに、青森県及び秋田県は、水質改善及びヒメマスの資源量回復のための具体的な方策
を示すため、『十和田湖水質・生態系改善行動指針』を策定したものである。
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2 行動指針の基本事項
(1)指針の性格
 この指針は、行政、試験研究機関、事業者(漁業、観光、発電等)及び十和田湖の周辺住民が実践する、
十和田湖の水質改善とヒメマスの資源量回復に向けた取り組みに関する具体的方法書である。
 今後、この行動指針をもとに、関係者が一体となって積極的に取り組んでいくものとする。

(2)指針の目的
 @十和田湖の水質を改善する。
項 目
改善目標値
COD(75%値)
1.0mg/L以下
透明度
12m以上
   ※CODについては「中央」及び「子の口前面」の全層75%値、透明度については「中央」の値で評価する。
 Aヒメマスの資源量を回復する。
 B水質改善及びヒメマス資源量回復後、将来にわたって良好な水質と生態系を維持していく。
 C住民等の環境保全意識の啓発を図り、環境保全活動を行いやすい雰囲気を醸成する。 

(3)指針の進行管理
 この指針の進行管理は、『十和田湖水質・生態系保全対策推進連絡会議』において行う。
 『十和田湖水質・生態系保全対策推進連絡会議』は、青森・秋田両県の関係行政機関(環境・水産・土木)
で構成し、学識経験者等の意見を踏まえながら、事業等の進捗状況、各種調査による事業の評価・検討
を行い、必要に応じて本指針の見直しをする。
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3 取り組みの内容
 本指針では、関係者が様々な活動を行う際に、十和田湖の環境に配慮して取り組むべき内容を次の5つの
大項目と19の中項目に分類する。

大 項 目
中  項  目
(1)汚濁負荷量の削減


@下水道接続率の向上
A発電用逆送水からの負荷量低減
B流入河川からの負荷量低減
C湖岸の周辺環境の整備、清掃
(2)水産資源の管理


@ヒメマス資源の適正管理
Aヒメマス以外の水生生物(ワカサギ、サクラマス、
 エビ類など)の総合的管理
B外来魚の密放流禁止
(3)沿岸域の保全と管理
@水生植物の保全
A湖内水位変動への配慮
(4)モニタリングの実施





@湖内水質調査
A湖内生態系調査
B流入河川調査
C発電用逆送水等調査
D底質調査
E水産資源調査
F未解明部分の調査研究の推進
(5)環境保全意識の向上

@研修等
A情報提供
B十和田湖環境保全会議の開催

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4 具体的な取り組み内容・方法
 前項では、取り組むべき内容を大項目と中項目に分類したが、本項では中項目のそれぞれの内容について、
具体的な行動として次のように小項目に分類する。
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(1)汚濁負荷量の削減
中 項 目
小   項   目
行政・試験研究機関
事業者・周辺住民
@下水道接続率の向上
 ・接続率100%をめざす。




・未接続者に対する巡回
 指導を実施する。
・下水道接続の必要性に
 ついて啓発に努める。
 (下水道未接続による
 十和田湖に及ぼす影響
 等について啓発する。)
・下水道の早期接続に
 努める。




A発電用逆送水から
 の負荷量低減


・逆送水の集水域における
 濁水発生の削減を図る。
・必要に応じて、事業者に
 対し流入水質の管理強化
 を指導する。
・水の濁り等を確認しな
 がら、逆送水の管理に
 努める。
・取水池の管理に
 努める。

B流入河川からの
 負荷量低減














・植生や緩衝帯設置等の
 対策を検討し、降水時の
 濁水流入防止に努める。
・河川改修、砂防、道路
 工事等に当たっては、
 濁水流入防止措置を
 講ずる。
・河川改修に当たっては
 自然植生を促す工法を
 検討し、生物多様性の
 確保を図る。
・コンクリート3面張り改修
 河川については、工法
 見直し等の対策に努める。
・裸地等については、
 植林等の対策を検討し、
 土砂流出防止に努める。














・裸地等を確認した際は、
 関係機関に対して、
 情報提供に努める。
C湖岸の周辺環境の
 整備、清掃







・観光客によるごみの
 散乱防止に努める。
・漂着ごみの除去に努め、
 湖岸をきれいに保つ。





・観光客によるごみの
 散乱防止に努める。
・側溝等の清掃を実施
 する。
・漂着ごみの除去に
 協力する。
・水鳥の餌付けはしない。
・遊覧船、漁船、モーター
 ボート等から廃油を
 排出しない。

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(2)水産資源の管理
中 項 目
小   項   目
行政・試験研究機関
事業者・周辺住民
@ヒメマス資源の適正管理







・十和田湖のヒメマスの
 環境収容力※1の把握に
 努め、より効率的な放流
 システム(放流尾数、放流
 サイズなど)を検討し、
 周知を図る。
・防疫に万全を期すると
 ともに、発病している
 種苗は放流させない。
・放流にあたっては健苗
 チェックを受けた種苗に
 より計画的に実施すると
 ともに、適正放流数を
 守る。

・種卵、種苗の移入は慎重
 に行う。
Aヒメマス以外の水生生物
 (ワカサギ、サクラマス、
 エビ類など)の総合的管理




・ワカサギ、サクラマス、
 コイなどの漁獲実態や
 資源生態について
 把握する。





・漁獲等によりワカサギ
 資源の抑制に努める
 (ワカサギの高度利用
 を図る)。
・サクラマス、コイなどの
 魚種は、適正放流を
 行う。
・コイ、フナなどの放流に
 際しては混入魚がいない
 ことを確認する。
B外来魚の密放流禁止





・ブラックバス(オオクチ
 バス、コクチバスその
 他のオオクチバス属の
 魚をいう。)やブルーギル
 の放流は禁止すると
 ともに、外来魚等の放流
 禁止の普及啓発を図る。
・ブラックバス等の外来魚
 は放流しない。




 【語句説明】※1 環境収容力:十和田湖に生息できるヒメマスの器の大きさ。ヒメマスの再生産関係や餌生物量などから推定される。
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(3)沿岸域の保全と管理
中 項 目
小   項   目
行政・試験研究機関
事業者・周辺住民
@水生植物の保全 ・水生植物保全のための
 啓発に努める。
・遊泳、ジェットスキー等に
 より沿岸域を攪乱する行為
 を控えるよう指導に努める。
・遊泳やジェットスキー等の
 沿岸域を攪乱する行為を
 控える(観光客を含む)。
A湖内水位変動への配慮
・青撫における取水及び逆送
 時には、湖内水位変動に
 配慮する。
・奥入瀬川への放流時には、
 湖内水位変動に配慮する。

(参考)河川と湖沼の移行帯としての湖沼沿岸域の水生植物帯には、@栄養分のトラップ機能、A植物
プランクトンの増殖抑制機能、B大型動物プランクトンの避難場所としての機能、C底泥の脱窒作用を促進し
リンの溶出作用を抑制する機能、D多様な水生生物の生息場所を与える機能等がある、と言われている。
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(4)モニタリングの実施
 十和田湖の水質と生態系の動向を把握し、施策の効果検証及び今後の施策決定の基礎資料とするため、
適切なモニタリングを実施する必要がある。
中 項 目
小   項   目
行政・試験研究機関
事業者・周辺住民
@湖内水質調査

・沖域、沿岸域の水質調査
 を実施する。
・湖水等に異常が認められた際
 には行政機関への情報提供に
 努める。
A湖内生態系調査


・湖内の生態系調査を実施
 する。
・水生植物の分布域調査を
 実施する。
・湖内の生物、植物等に異常が
 認められた際には行政機関へ
 の情報提供に努める。
B流入河川調査

・融雪期、降雨時、平水時
 の水質・負荷量調査を
 実施する。
・湖水等に異常が認められた際
 には行政機関への情報提供に
 努める。
C発電用逆送水等調査



・青撫の発電取水口から
 湖内に放流される水質・
 負荷量調査を実施する。

・湖水等に異常が認められた際
 には行政機関への情報提供に
 努める。
・取水する事業者は湖内水位
 観測を行う。
D底質調査


・底質の性状調査を行う。
・底質の性状による水質
 への影響を把握するため
 の調査を実施する。

E水産資源調査



・十和田湖のヒメマスを
 はじめとした魚類生態
 調査を実施する。

・魚類の異常等(へい死・浮上
 個体の出現、魚病、異常発生、
 新たな種の確認等)があった際
 には行政機関への情報提供
 に努める。
F未解明部分の調査研究
 の推進












・難分解性有機物等の
 CODの構成要素とその
 由来について解明する。
・物質収支を把握するため、
 湧水等の水収支(物質
 収支を含む)を明らかに
 する。
・ウログレナ※2等による
 赤潮の発生要因、
 沖のプランクトンの変動
 要因について解析する。
・魚類群集ごとの適正な
 漁獲量、摂餌生態、
 魚病歴等の水産資源
 情報を明らかにする。

 【語句説明】※2 ウログレナ:淡水赤潮の原因となる植物プランクトンの一種
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(5)環境保全意識の向上
 水質保全対策の推進に当たっては、住民の理解と協力が必要であることから、生活排水対策等環境保全意識
の向上についての普及・啓発を行う。
中 項 目
小   項   目
行政・試験研究機関
事業者・周辺住民
@研修等


・環境保全に関する活動や
 研修会等を開催する。
・地域で行われる研修会等
 へ積極的に協力する。
・研修会等に積極的に参加し、
 環境保全意識の向上に
 努める。
A情報提供




・広報誌、パンフレット等に
 より、環境保全に関する
 情報提供に努める。
・十和田湖の保全について、
 観光客に対し理解を
 求める。
・パンフレット等により、環境
 保全についての理解を深め、
 環境にやさしいライフスタイル
 を実践する。
・十和田湖の保全について、
 観光客に対し理解を求める。
B十和田湖環境保全会議
 の開催
・定期的に開催する。
・会議に積極的に参加し、意見
 や要望等の発言に努める。

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5 資 料
 資料1 十和田湖水質・生態系改善施策体系図
行政・試験研究機関と事業者・周辺住民が行動指針を実践し、水質・生態系の改善へつなげる。
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 資料2 十和田湖の水質(COD、透明度)とヒメマスの漁獲量推移
CODは昭和61年度以降、環境基準を達成できず。透明度は長期的には低下傾向にある。ワカサギが昭和57年に出現してから、ヒメマスの漁獲量が減少した。
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